川本バイオビジネス弁理士事務所
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最新情報

中国の新薬「データ保護」規則(案)の公表

長らく新薬業界とジェネリック業界の利害調整に手間取っていた新薬データ保護制度(https://www.kawamotobbp.jp/articles/2560)ですが、今回、中国政府は新薬「データ保護」規則(案)(药品试验数据保护实施办法(征求意见稿):https://www.nmpa.gov.cn/xxgk/zhqyj/zhqyjyp/20250319181537196.html)を公表しました。新薬について、 のデータ保護を付与し、その間、原則、ジェネリック薬は承認しない、としました。 但し、新薬に関する特許期間の延長制度(https://www.kawamotobbp.jp/articles/2375)と同様に、新薬のデータ保護を受ける為には、中国での早期開発等の条件が付いています。 まだ、(案)の段階ですが、かなり煮詰まって来ており、今後、最終化の上、年内には施行予定とされています [続きを読む]

医薬品開発におけるAIの活用 〜DeepSeekから見た新たなAIイノベーションへの活用〜

医薬品開発でのAI活用が進んでいる中でDeepSeek社が発表した新たな生成AI開発技術、オープンソース化が与える創薬領域、特に「基礎研究・ターゲット選定」でのインパクトを検証する。 DeepSeekのインパクトはOpen AI並みの性能を持った生成AIがオープン化したことでカスタマイズが可能となることである。また、DeepSeek社がオープン化した事により今後出てくる生成AIも同様な取り組みをすると予想される。下記に記載したように「基礎研究・ターゲットバリデーション」では臨床データ、オミックスデータ、遺伝子情報等の臨床ビッグデータを活用した新しい創薬ターゲット選の取り組みが進んでいる。これらの取り組み推進にはアルゴリズムの作成、AIプラットフォームの構築が必要で、オープン化された生成AIの活用は朗報であると言える。 医薬品開発の現状とAI活用の現状 医薬品開発におけるAI(人工知能)技術 [続きを読む]

今度こそ、動き出す「データ保護」

トランプ政権(第二次)の胎動による政策転換が世界、日本の政治経済にどのような影響を与えるのか喧しい。更には、米中の経済摩擦の動向が日本に与える影響が気になるところである。さて、そのような情勢下、我々の眼中にあるのは、中国の新薬の知財保護がどのような影響を受けるかである。 1.トランプ政権(第一次)時代の米中の経済・貿易協議と「データ保護」: 第一次トランプ政権(2017年~2021年)時代の米中摩擦を振り返ってみよう。米中間の貿易不均衡(米国の対中貿易赤字)に不満を募らせたトランプが2018年に、中国産の鉄鋼に関税をかけると発言、これに端を発して、他分野の製品に対して米中が相互に関税をかける事態に発展した。その後、貿易不均衡に留まらず、中国政府が企業に産業補助金を支給していることによる中国企業の急成長、米国の知的財産の盗用による中国企業の先端技術獲得、中国のハイテク産業の育成政策「中国製造 [続きを読む]

中国における「医療腐敗」取締りの現状

2024年3月12日、中国の整形外科の権威である積水潭医院(北京)の元院長である田偉氏が当局に拘束されたことは、医療業界に大きなインパクトを与えました。自宅から多額の現金が見つかり、国内外に複数の別荘を所有していました。これまで、中国工程院の院士レベルの医師が汚職により逮捕されたことはありませんでした。これとは別に、雲南省の第一人民医院の元院長の王天朝氏も100軒を超えるマンションを受け取ったとされました。このように、2023年から始まった医療腐敗・汚職の取締りによって、おびただしい数の公立病院の院長、管理者、医師が逮捕されました。さらに、製薬会社や医療機器メーカー、医薬代理商・卸なども相次いで調査をうけました。これらには国内の多くの大手企業が含まれています。 以上の事例は、中央政府の腐敗防止機関である「中央規律検査委員会」が主導する一連の取締りであり、複数の医療機関・関係者が摘発されまし [続きを読む]

香港IPO、2024上半期のまとめと今後の見通し

2024上半期のIPO件数(全産業セクター)は世界で551件(前年同期比-12%)、資金調達額の合計は522億米ドル(同-16%)でした。リージョンごとの内訳をみると特にアジア・太平洋のシェアが昨年に引き続き下がっています。しかし後述しますがその中でも香港市場は比較的に堅調でした。 ヘルスケアセクターのIPO概況 世界のヘルスケアのIPO件数は58件(同-6%)とほぼ前年と同じでしたが、資金調達額は89億米ドル(同+69%)と大幅に増加しました。これをみると、バイオテクノロジー部門は引き続き技術の進歩を続けており投資対象として注目されていることがわかります。特に抗がん剤や肥満治療薬といった新しい分野で投資が増えています。 例:ArriVent BioPharma IPO市場:NASDAQ 調達金額:1 億 7,500 万米ドル 中国やその他の国で有望なシードを見つけ、米国市場に持ち込むのが [続きを読む]

中国での臨床試験のSpeed Up化 / 治験申請(IND)が「30日」承認の方向へ

7月末にNMPA(薬監局)からIND申請から「30日」以内に承認の可否を下す試行を2025年1月から開始すると発表されました。<臨床試験の承認審査の最適化の為の試行的運用の通達 / 优化创新药临床试验审评审批试点工作方案的通知> https://www.nmpa.gov.cn/xxgk/fgwj/gzwj/gzwjyp/20240731184417109.html 1.7月の薬事承認申請の件数 7月単月の医薬品の承認申請件数は、1219件(上市、臨床試験等を含む)でした。下記の表1を参照。このうち、臨床試験に関する申請(IND)は172件、その中で、一類の新薬(新規有効成分を含む薬剤)は128件。 国内外別のIND申請の内訳は、中国国産によるものが107件、輸入品が21件です。 従来、申請してから「60日」以内に当局からNoの返事がない限り、臨床試験を開始してよいというルールでした(薬品管 [続きを読む]

体重減少が非臨床で確認されている開発品 ~肥満症治療薬「ウゴービ®」日本で発売~

GLP-1受容体作動薬が先行 社会的に高い関心が寄せられているノボノルディスクファーマの肥満症治療薬「ウゴービ®」が、2024年2月22日国内で発売されました。「ウゴービ®」は、セマグルチドを有効成分とするGLP-1受容体作動薬です。また、2023年11月8日には米イーライリリーの2型糖尿病治療薬「マンジャロ®」が肥満治療薬としてFDAにより承認されています。こちらもGLP-1受容体作動薬で商品名は「ゼップバウンド®」です。 肥満症治療薬は、上記2社のほかにも多くの製薬企業や創薬ベンチャーが開発を手掛けており、市場規模は今後10年で1000億ドル(約15兆円)に達するとの見方があります。 後を追うNLRP3阻害剤 一方、自然免疫に関わるパターン認識受容体であるNLRP3は、情報伝達因子ASCやプロテアーゼCaspase-1と共にNLRP3インフラマソームを形成し、炎症性サイトカインIL-1 [続きを読む]

「変換期を迎える中国医薬品産業」セミナー3月5日開催

「創薬研究」、「医品のライセンスIn/Out」、「市場/薬価」、「知財」 の観点から現状と展望を解説! 近年、世界の製薬大手が中国のベンチャー企業と開発・製造・商業化に関する独占的ライセンス契約を締結したというニュースが相次いでおり、一昔前には想像もつかなかったことが現実となっています。中国での研究開発が急速に進んでいることが伺え、このような傾向は、今後も続くと考えられます。そこで、本セミナーでは、中国で新薬の研究開発に携わるFrank Wu氏、10年以上にわたり日中最新の医薬品におけるビジネスに従事する川本啓二氏、中国の薬事規制・手続きに孫華龍氏をお招きして、中国の新薬研究現状や創薬研究のためのヒト・モノ・カネ・情報、国家主導の研究開発及び医薬品のライセンスの導出・導入の実態について解説頂きます。 概要 日時 2024年3月5日(火) 13:00~17:00 会場 株式会社シード・プラン [続きを読む]

中国の新薬の特許期間の延長制度が動き出す!(2024/3/22 更新)

中国の「特許期間の延長」の制度、いよいよ、運用がスタート、知識産権局(中国特許庁)で審査が始まります! 2021年に改正された特許法の中で、新薬の特許について5年を限度(但し、新薬上市後、14年を超えず)とする「特許期間の延長」に関する規定が盛り込まれました。それに前後して、具体的な運用を盛り込んだ実施細則、審査便覧(「審査指南書」)の改正案が公表され、その中で「特許期間の延長」に関して、延長の計算方法も含め、詳細な規定案が示されていました。ところが、それから2年間、公表された案に対して、中国国内で意見聴取はされていたものの、改正案が最終化されず、宙ぶらりんでした。販売承認が下りた新薬に対し、特許権者は「特許期間の延長」の申請をしていましたが、知識産権局(中国の特許庁)でどのような取扱いになっているのか誰にも分からない状況でした。 2023年末に、上記の「実施細則🔗」、「審査指南書🔗」の最 [続きを読む]

【まだ動かない?】新薬を巡る知財保護制度の進展

中国の「新薬の知財保護」の新制度のグランドデザインは、2017年に国務院の公表による「新薬等の研究開発を推進する為の承認申請制度の改革に関する政策文書(42号文書)(关于深化审评审批制度改革鼓励药品医疗器械创新的意见)」の中で、下記の3つの制度を導入する旨、明記されています。 その後、2021年1月、トランプの“活躍”で「米中貿易協議書」の中に中国の知財保護制度の改正に対して言及されており、中国は、新薬等の知財保護として、上記の①、➁、③の3制度の導入をアメリカに対してコミットしました。 そして、2021年6月に改正特許法が施行され、その中には、上記の①、③が条文として盛り込まれました。さて、現在、具体的な実施状況は如何に? 1.Patent Linkage 先発の新薬をカバーする特許(一般に当該新薬を開発した企業が所有する特許:「新薬特許」)の満了前に、対応のジェネリック薬が薬事当局(N [続きを読む]