特許行政 / 北京政府 vs 地方政府
日本では特許庁が特許の主管庁として出願を受理し、審査、特許権の付与の業務を行うと同時に、特許政策の立案を主導しています。一方で、知的財産権の侵害事件等は、裁判所での処理、即ち、侵害に対する停止、損害賠償の請求等の救済措置は裁判所で実現、解決を図っていく制度をとっています。
さて、中国ではどうでしょうか?日本の特許庁に該当する組織、国家知的財産局が北京にあります。そして、侵害問題は、裁判所で解決を図っていくことが勿論、可能です。中国特有な制度として、それに加えて、行政による救済です。日本でも、昔は、護送船団方式とかの呼び名で、政府が企業活動に口出しをしておりましたが、今の中国、行政が企業活動に対して強い影響力を行使していると言われています。企業の行為に問題がある場合には、行政機関として工業生産・商業、製品品質、食品・医薬品、環境、税務、関税、外貨管理、労務社会保障等を担当する政府の各行政部門が企業に対して調査・処罰権を有しています。そして、企業が知的財産権の侵害行為にかかわった場合も、行政機関が対応、関与してきます。
行政といった場合、日本では中央の行政のコントロールが強すぎるので、それを改めるといった議論がされますが、一方で、中国は、なにせ、13億の人口を抱え、日本の国土の25倍、多民族国家で、地域によって経済事情が異なっていることから、地域特有の対応をする必要性もあり、その意味で、地方政府もある意味で大きな力を握っています。ですので、中央政府に加えて、その地方政府も企業活動に様々なレベルで介入??してくる、といった多重構造になっています。特許面では、どうか?日本との違いは、先ず、中国特許法の§4に特許行政を司る政府部門として、中央政府の行政部門と地方政府の特許事務管理部門の其々の職務権限・範囲の概略が規定されていて、実施細則には、地方政府の特許事務管理部門の職務分掌が規定されています。実際の組織の名称としては、前者は、国家知的財産局、後者は、例えば、上海の場合、上海市知的財産局と呼ばれます。上海は、直轄市であり、地方としての各省に設けられているーー知的財産局と同列の組織です。
国家知的財産局は、前記の通り、日本の特許庁をイメージしていただくとして、さて、地方政府の上海市知的財産局の職務分掌は? 日本には明確に存在しない組織ですので、注意が必要です。その一つの役割が、上記で言及した侵害問題が発生した際の、侵害行為の停止命令の措置、及び損害賠償の調停をすることが出来る権限です。さて、その詳細は、次回に。
<次回の記事>
Author Profile
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弁理士 (川本バイオビジネス弁理士事務所(日本)所長、大邦律師事務所(上海)高級顧問)
藤沢薬品(現アステラス製薬)で知財の権利化・侵害問題処理、国際ビジネス法務分野で25年間(この間、3年の米国駐在)勤務。2005年に独立し、川本バイオビジネス弁理士事務所を開設(東京)。バイオベンチャーの知財政策の立案、ビジネス交渉代理(ビジネススキームの構築、契約条件交渉、契約書等の起案を含む)を主業務。また3社の社外役員として経営にも参画。2012年より、上海大邦律師事務所の高級顧問。現在、日中間のライフサイエンス分野でのビジネスの構築・交渉代理を専門。仕事・生活のベースは中国が主体、日本には年間2-3か月滞在。
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