中国医薬品企業の研究開発投入資金トップ20
中国の医薬品企業(株式公開の企業)のR&D費用の投入額トップ20(2020年度)リストが下記の通り公表されました(Insight社)。
画像元:Insight数据库
中国で研究開発型企業の横綱は、東が百済神州(Beigene)、西が恒瑞(Hengrui)です。トップのBeigeneは昨年度に約1440億円の研究開発費を投入、次いでHengruiは約830億円です。また、研究開発費の対営業収入の比率が100%を上回った企業は三社あり、再鼎(Zai)が450%、百済神州(Beigene)が420%、基石薬業(Cstone)が135%です。
更に、研究開発費の伸びは、信達生物(Innovent)、君実生物(Junshi)が前年比50%を超えています。
中国で臨床試験を開始するための中国企業によるINDの申請件数は、国の新薬奨励策の下で明らかな形で増加しています。化学医薬品のIND申請数は過去7年増加傾向にある中で、2017年以降さらに大きく増加してその年は66%増、その後2020年には1096品目となっています。また2020年の上市承認の件数は20品目です(いずれも中国内資の医薬品企業の数字)。
これらの変化は2015年に始まる国の薬事政策転換に起因しており、優先審査、品目登録分類、MAH(工場を所有せずとも上市承認取得が可能)等に関する新薬優遇政策により、新薬の研究開発、承認審査、製造、保険適用等の分野で新薬を取り巻くビジネス環境が目に見える形で改善されていることによります。そのことが、中国の新薬の研究開発能力の急速な底上げに繋がっています。
医薬品市場面から見ますと、市場の大部分を占めているのはジェネリック薬であり、新薬が占める比率(物量)は10%前後にしかすぎません。逆を言えば、将来の新薬市場の伸びしろは巨大とも言えます。今日の研究開発費の継続的な投入が将来の新薬市場の拡大の基礎になっているのです。ジェネリック薬から新薬へ、そして国内市場から国際市場へ、これが今後の流れの大きな方向性になっていくと思われます。
なお、中国ではあらゆる分野で番付をして公表するのが常態です。学校の成績しかり、各省のGDP番付しかり。しかしながらある中国企業がリストに掲載されているからといって、日本企業がその企業を相手として組む安心材料になるかと言えば必ずしもそうとも言えないことに留意する必要があります。中国はあらゆる分野で玉石混合の状態です。相手の名が通っているからと言ってそこと組むのがいいのか、日本的な感覚は通用しないことが多いので十分に考えてみる必要があります。
Author Profile
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弁理士 (川本バイオビジネス弁理士事務所(日本)所長、大邦律師事務所(上海)高級顧問)
藤沢薬品(現アステラス製薬)で知財の権利化・侵害問題処理、国際ビジネス法務分野で25年間(この間、3年の米国駐在)勤務。2005年に独立し、川本バイオビジネス弁理士事務所を開設(東京)。バイオベンチャーの知財政策の立案、ビジネス交渉代理(ビジネススキームの構築、契約条件交渉、契約書等の起案を含む)を主業務。また3社の社外役員として経営にも参画。2012年より、上海大邦律師事務所の高級顧問。現在、日中間のライフサイエンス分野でのビジネスの構築・交渉代理を専門。仕事・生活のベースは中国が主体、日本には年間2-3か月滞在。
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