【恒瑞医薬】収益鈍化―新薬の医療保険収録が影響

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最終更新日: 2022/05/26

中国の医薬品業界のリーディング・カンパニーともいえる恒瑞医薬(Hengrui Medicine、600276.SHA)が2021年第三四半期(7月~9月)の決算を発表、純利益は2000年上場後としては初めての減少となりました。

2021年第三四半期の売上高は69億元(通期は202億元)で前年同期比14.84%減(同4.05%増)、純利益は15.4億元(同42.1億元)で前年同期比3.57%減(同1.21%減)となった。

多くの中国製薬企業と同様に恒瑞医薬もジェネリック・メーカーからスタート。いち早く新薬のR&Dを手掛け、今まで数多くの新薬を市場に送ってきた。ジェネリック薬から新薬への転換といった近年の大きな流れの中で恒瑞医薬は先駆的な役割を演じてきたことから中国製薬企業の模範ともされ、株式時価総額もトップとなっている。ここ数年、中国では医薬品の集中購買制度が実施され、この制度改革によって恒瑞医薬も例外とはならず大きな影響を受けた。2020年11月開始の第3期集中購買で六つの品目が対象となり、今年度の売上高にネガティブな影響を及ぼした。さらに新薬のPD-1抗体camrelizumab(SHR-1210)は医療保険の収載対象となるための価格交渉で85%も値引きされ、影響は更に拡大した。

これらの要因から、今年恒瑞医薬の株価も反落し、時価総額ベースで2021年10月29日現在3150億元となり、これは年初来高値の5929億元から47%ダウンの数字である。

この困難な状況に対処するため、今年7月に創業者の孫飘揚氏が会長に復帰し、陣頭指揮を執ることになった。

今後の動向としては、将来を占うことになりうる研究開発費が今年度の第三四半期まで41.4億元であり、前年同期の33.4億元に比べて24%増となった。これに対して管理費は15.4億元であり、前年同期の18.8億元より減少となった。これからの業績に注目したい。

分析

PD-1新薬の医療保険の収載に伴った85%薬価ダウンですが、中国では後続に多数のPD-1抗体の開発が目白押しであり、政府はこれを受けて強気に出てきたという背景があります。広く一般に新薬がこのような扱いを受けるという事ではありません。医療保険の収載後の薬価ダウンを見越して、あえて上市承認取得後、高薬価で市場に参入するといった例も見受けられます。

Author Profile

呉 晨
呉 晨
中国の大手製薬メーカーの白雲山製薬(広州)勤務後、日本の大学院に留学。ケアネット社で数年勤務後、中国子会社の社長として2012年上海赴任。その後、上海のCRO会社副社長兼CMC研究所長を経て、康祺生物科技有限公司社長に就任。日中両国間の医薬品の生産、研究開発、学術プロモーション等の分野に精通。
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