中国ではホットな分野ではどこも過当競争、大学の入学試験しかり、電気自動車ビジネスしかり、そして新薬開発も。
PD-1抗体医薬では、このような競争が。2011年にBeigene(百済神舟)等の中国の先発4社が研究を開始、臨床試験を終えて上市を果たしたのは2018年末のこと。この間、100社以上が研究開発に参入。研究開発の過当競争の後に控えているのは、マーケティングの過当競争。2023年5月の時点で、中国内資企業の研究開発によるPD-1抗体の上市承認は10品目近くを数えます。中国市場では、これら国産品が先発にあたるBMS等の外資のPD-1抗体に加えて、ずらっと並んでいます。
その次に競争の波が来ているのが、ADC(抗体薬物複合体)。現在、中国国内企業の110社が研究開発競争に参列しており、うち、70品目が臨床試験段階に。中国市場には外資を中心に8つのADCが上市済で、うち、RemeGen(栄昌)の国産ADC(HER2)の1品目含まれいます。また、早期開発段階のADCについて外資へのライセンス・アウトが続いています。
マルチ企業がからむディールとしては、2022年7月末にKelun-Biotech(科倫博泰)が、SKB264(TROP2-ADC/TNBC乳がん)の全世界の開発・製造・販売権をメルク(Merck)に供与(https://www.kawamotobbp.jp/articles/2285)、その後も両社は前臨床段階の複数のADC品目を含めて二回にわたって提携関係を拡大しています。そして、直近の5月には、LaNova(礼新医药)が前臨床段階のLM-305(GPRC5D-ADC)をアストラゼネカにグローバルのライセンスを許諾。アストラゼネカは2月にLupu Bio (楽普)/ KeyMed Biosciences(康諾亜)からCMG901(Claudin18.2- ADC)を導入したのに続いて、今回、中国から2件目のライセンス導入となります。
尚、中国の研究開発にかかるADCの外資へのライセンス・アウトのリストは下記の通りです。
契約時期(年・月) | ライセンサー(中国) | ライセンシー | 契約金総額 |
2021.8 | RemeGen(栄昌) | Seagen(ファイザー) | 26億ドル超 |
2022.5 | LaNova(礼新) | Turning point (BMS) | 10億ドル超 |
2022.5 | KeLunBio(科倫博泰) | メルク | 14.1億ドル |
2022.6 | DAC· Bio(多禧生物) | J&J | ——- |
2022.7 | KeLunBio(科倫博泰) | メルク | 9.36億ドル |
2022.7 | CSPC(石薬) | Elevation Oncology | 11.95億ドル |
2022.12 | KeLunBio(科倫博泰) | メルク | 94.75億ドル |
2023.1 | DUALITY(映恩生物) | Adcendo | ——- |
2023.1 | Evopoint(信諾維) | AmMax | 8.71億ドル |
2023.2 | CSPC(石薬) | Corbus | 6.92億ドル |
2023.2 | Lupu Bio (楽普)/ KeyMed(康諾亜) | アストラゼネカ | 11.88億ドル |
2023.4 | DUALITY(映恩生物) | BioNTech | 16.7億ドル |
2023.4 | GeneQuantum(啓徳) | Pyramid Bio | 10.2億ドル |
2023.5 | Bliss Bio(百力司康) | エーザイ | 20億ドル超 |
2023.5 | LaNova(礼新) | アストラゼネカ | 6億ドル |
中国企業の研究開発による新薬ディールとしては、PD-1抗体よりもADCが数段ホットな動きとなっています。
上記のリストでライセンサーとして名を連ねている企業には、ジェネリック薬ビジネスを起源の伝統的な企業、KeLun(科倫)やCSPC(石薬)も含まれていますが、大半は、誕生して6-7年のバイオテック企業。進境著しいと言えます。